外断熱とはなにか

耐震性と並んで多い質問が、「外断熱は必須でしょうか?」 というものです。外断熱の役割を整理して、そのメリット・デメリットを考えます。

断熱方法

 断熱とは、外気温の室内への影響を小さくするため、熱を伝えにくい材料で室内を覆うことで、快適性が向上するばかりでなく、冷暖房の負荷を低減することに繋がります。エコロジーへの関心が高まっていることもあって、住宅の性能として注目されるようになりました。

 

 ここで外断熱を考える前に、断熱の方法にどのようなものがあるのかを整理します。

《外断熱を外貼り断熱と言う人がいるように、呼び名はいろいろあるようですが、ここでは単純な呼び方を使います》

 断熱は、覆う場所の違いによって次の3つに分けられます。

 

 「外断熱」・「内断熱」・「充填断熱」

 

 建物外壁の外側に断熱材を貼るのが「外断熱」で、建物外壁の内側に貼るのが「内断熱」。

 「充填断熱」は少し特殊で、外壁本体に空隙がある場合に、断熱材を詰め込むものです。鉄骨造や木造などで使われますが、鉄筋コンクリート造や組石造では空隙がないので使われません。

 

地域的傾向

 断熱は寒いところで発達しました。

 寒い地域では窓を閉ざして暖炉などで室内を暖めるため、その暖気を逃がさないために断熱が重要だったのです。

 一方で、冷房装置が発明されたのは最近なので、冷房という概念が無かった時代、暑い地域では窓を大きく取って風通しを良くする方法が選ばれて、断熱には関心がありませんでした。東南アジアに竹で編んだ外壁が見られるように、陽射しを遮ることができればむしろスカスカの方が良かったのです。

 

 アフリカや中近東など日射が厳しく乾燥している地域では、窓を小さくして土壁を厚く作ることを選びましたが、今回これは例外とします。

 

 暖房時を考えると、外断熱と内断熱の違いは、外壁を含んだ建物ごとを暖めるか、室内の空気だけを暖めるかという違いになります。

 昼間、ほどほどに暖かくなって暖房を必要としない地域では、寒い夜だけ素早く空気を暖められる内断熱が便利でした。

 他方、昼間も暖房の欲しい、緯度の高い欧州北部などでは、建物ごと暖めてしまえば就寝時に暖炉の火を小さくしても急に寒くなることがないので、外断熱が有効でした。

 

建物の種類

 そして、建物の種類も大きく影響します。

 組石造の多い欧州では、建物の熱容量が大きいので暖めがいがありますが、木造の場合は木材の熱容量が小さいので暖めがいはありません。そこで、外側の仕上げ板と内側の仕上げ板の間にグラスウールなどを詰めた充填断熱として、建物本体を暖めるかどうかには無関心だったのです。

 

 こう見てくると、家を建てる場所が寒冷地なのか温暖地なのか、その建物が鉄筋コンクリート造なのか木造なのかで違ってきて良いのではないかと思われます。

 他に、窓を開けることの多い暮らしと、換気扇で必要量だけ換気する暮らしでも変わるかも知れません。これは郊外型と都心型のライフスタイルの違いでしょうか。

 

 そうしたことを省略して、外断熱の是非を考えるので混乱が生じたように思われます。

 

結露

 ここまでは断熱の目的を室内環境の点から見てきました。次に、断熱のもうひとつ重要な目的、結露対策について考えてみます。

 

 少しでも湿気を含んだ空気が冷たいものに触れると、結露が生ずるのはみなさん良くご存知の現象です。外壁が冷たい場合、ここに加湿された室内空気があたると簡単に結露します。結露は不快なばかりでなく、仕上げ材や時には構造材も腐食させるやっかいなものです。

 この点から外壁が室内温度に近い外断熱は高く評価されます。

 

 ですから、熱を伝えやすい鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物は、本来初めから外断熱にするべきでした。しかし日本では木造建物の延長線上で考えましたから、費用のかかる外断熱を避けて、内断熱であるウレタン吹付け断熱などで補ってきたのです。

 これが改められるのは良いとして、木造ではどうでしょうか。

 

 充填断熱が不充分だった場合、室内側の仕上げ板は外気並みに冷えるので結露します。しかし、きちんと充填断熱をした場合は、外壁に繋がるのは柱と間柱(柱の間の細い柱)だけであり、木材は断熱材には劣るものの熱を伝えにくいので、目に触れたり構造に悪影響を与えたりするほどの結露は起きません。

 数値で解析すれば外断熱の方が優れた値になるとしても、その違いは限定的で、必須とか絶対と言われるものではないでしょう。

 

 ここでも、建物の種類を省いた議論が混乱の元になっているのです。

 

デメリット

 木造住宅では、外断熱にした場合にデメリットもあります。

 外断熱は、外壁の外に断熱材を貼り、さらにその外側に外壁仕上げをしなければなりません。

 断熱の性能は、断熱材の種類にもよりますが、同じ材なら厚さによって大きく差が出ます。このため、性能を上げようとするほど断熱材は厚くなり、その結果外壁仕上げは建物から離れることになります。

 この外壁仕上げ材が重かった場合は、離して固定することは容易ではありません。     

 まして日本は地震国で、木造住宅は柔らかく揺れることで地震力を吸収しますから、揺れても変形しないようにするためにはかなりの補強と時間をかけた施工が必要とされます。こうしたことから、外断熱は高額になるのです。

 

 外壁仕上げを軽くすれば良いのですが、市街地では火に強い性能が求められますので、一般的には軽量化が困難なのです。

 

総合判断

 このように見てくると、外断熱が断熱の本家本元の欧州北部で基本とされたことがわかり、優れた方法であることが理解できる反面、日本の関東以西に建てる、特に木造住宅では必須かどうか、最適解かどうか、意見が分かれることがご理解いただけるでしょう。

 

 「外断熱だから優れている」とするのはあまりに観念的過ぎますし、そこで思考停止してしまうと、外断熱なのに断熱性の低いアルミサッシを併用するような本末転倒が起きてしまうのです。

 

 厚い(100㎜)高性能グラスウールを隙間なく充填すれば、充分な断熱性が得られるとする研究者が少なくなく、私もそのように考えます。

 

補足:外壁通気工法

 断熱工事とは異なりますが、建物の性能的には同じように大切な通気工法について簡単に補足します。

 外壁通気工法とは、外壁を作って防水紙でくるんだ後、隙間を設けて外壁仕上げ材を取り付ける工法です。隙間は15㎜~20㎜程度と小さなもので充分です。

この工法の目的は3つあります。

 

1 防水紙を空気に触れさせて、濡れたあと簡単に乾くようにする。

2 壁の中の湿気を、この隙間から壁伝いに外に放出する。

3 日射を受ける外壁仕上げ材を離すことで、日影効果を期待する。

 

 もちろん、この工法も外断熱と同様必須ではありませんが、方法が違っても同じ効果が得られるように、設計者・施工者とよく相談されることをお勧めします。