D 床面積制限緩和の使い方

D-1 出窓ベンチ

 

 出窓の効果については誰もが実感していることでしょう。部屋が広く感じられますし、ちょっと物を置いたり飾ったりするのも楽しいものです。
 少し変わった出窓として、ベンチ型出窓があります。出窓は一定の要件を満たせば、面積に算入しなくてもよいため、容積率や建弊率がぎりぎりの時は威力を発揮します。ベンチとして座ることができれば、その分の椅子が省略できて床面が広く使えることになるからです。

 

 面積に算入されないための条件は次のものです。


○台になる部分が、床面より30cm以上高いこと。
 (普通の椅子は40㎝程度です)
○外壁面からの出っ張りが50㎝未満であること。
 (通常の座面は奥行き40㎝で十分です)
○出ている壁面の半分以上が窓であること。
 (半分以下であれば背もたれを作れます)
○出窓の屋根は、本体の屋根と切り離されていること。
 (一緒だとすっきりしますが断念)

D-2 天井高1.4m以下の収納(物入れ)

 

 この面積緩和は、部屋の用途が物入れ限定となりますが、2000年の建築基準法改正で、それまで小さな小屋裏収納だけに認められた面積緩和(不算入)が、床下・天井裏収納にも援用されました。
 天井高が1.4m以下で、面積がその階の1/2以下であれば、延床面積に参入しなくてもよくなりました。1.4mという天井の高さは歩くことができないものの、趣味のものをしまったり広げたりするには充分な高さです。通常のテーブルの高さが70㎝ですから、度倍の高さを想像してみてください。


 敷地の面積から建物の面積は制約を受けていて、多くの場合面積不足が悩みのタネになっています。

 例えば延床面積の上限が25坪のとき、4LDKにしようとすると収納スペースはごく限られた大きさにならざるを得ません。そんな時にこの緩和措置を使えば、天井が低いとはいえ12帖程度のスペースが得られてずいぶん違った家になるでしょう。

 

 高さ制限の厳しい地域では導入が難しいこともありますし、他の部分とのバランスが取れないと快適性が損なわれてしまいますが、大きな可能性が感じられます。

D-3 半地下

 

 面積の緩和には、地下室もあります。
 これは、住宅に限って一定の条件を満たせば延床面積の1/3まで、不算入として良いというものです。先に挙げた物入れと大きく違うのは、天井高・部屋の用途に制限がないことです。
 上と同じ例で考えると、1階・2階とも12.5坪の、総2階(延床25坪)の家ならそのまま地下12.5坪が作れるのです。
 2階建が3階建になったインパクトがあります。


 一般的に地下室は居住性に難があり、そんなところをいくら増やしても有難くないという声もあるかと思いますが、かなり快適な地下室を作ることも可能です。

 

 この不算入にできる地下室の条件は、地下室の天井が地盤面(平坦地であれば地面)+1mよりも低いことです。反対に言えば天井から下の1mまでは地上に出ていてよいため、窓を作ることができます。

 勾配天井などを工夫すれば明るく快適な窓も作れますし、ドライエリアと呼ばれる空堀(からぼり)を地下室の前に作れば掃き出し窓も可能で、寝室としても違和感がありません。

 そうした措置を取らないと、普通の居室にはマイナス要素のある地下室ですが、防音室や保管・展示室としてなら利点ともなりますし、浴室などを贅沢に楽しむ人も多く見られます。

D-4 ガラス屋根地下室

 

 上に挙げた半地下よりも積極的な地下室に、ガラス屋根の地下室があります。

 建築基準法で、地面から高さ1mまでは建物があっても建築面積に含まないとされています。これを利用して、とても明るくて活動的な地下室を作ることができます。


 地下室を1階とずらして作った場合、そのずれた部分は上に建物がないのでガラス天井(屋根)にすることができます。地面すれすれでは雨などが心配ですが、冒頭に書いたように1mまでは自由なので、この高さまでで充分な防水措置を施せばよいのです。

 

 ガラス屋根つまりトップライトは、同じ面積の窓より3倍以上明るいとされています。ですから、少し大きめのガラス屋根のある地下室は、地上の部屋より明るくすることも少しも難しくありません。(むしろ夏の日射対策が必要ですが)


 楽器の演奏教室などを自宅の地下に設けた例もあります。(面積不算入が全体の1/3なのは半地下と同じです。)

D-5 ロフト

 

 ロフトは、先に触れた「天井高1.4m収納室(物入れ)」と、法的にはまったく同じ扱いです。
 しかし、小屋裏に設けたロフトは他と違った環境を得られることが少なくありません。作り方によっては光で満たすこともできるからです。
 また、人は高い位置にいる時は、立っているより座ったり寝そべったりしているほうが落ち着きます。ですから、天井高の制約はロフトでは感じられにくくなると言えるでしょう。


 ロフトのそばにトップライト(天窓)を設ければ、明るいばかりでなく眺望も得られます。夏は大変暑くなるところで快適とばかりは言えませんが、屋根断熱にするなど対策を講ずれば問題はありません。屋上との繋がりを考えるなど、楽しみなスペースでもあります。