F 使いやすい収納

F-1 玄関収納(靴入れ)

 

 建売住宅では、当たり障りのない既製品の玄関収納が据え付けられます。これはごく見なれた風景で、注文住宅でも既製品から選ぶことに疑問を持たれる方は多くないようです。でも、玄関収納は最初に目にするインテリアデザイン要素のためか、思った以上に家全体のイメージを支配するので、せっかくの注文住宅なら他の可能性も検討してみたいものです。手法としては、「主張させるか」VS「消すか」を意識して、その目的に応じて材質や色を絞り込むとよいでしょう。

 機能面では扉の開き方が重要です。広くないスペースで楽に開閉できなければストレスになります。もう一点は内部の棚板の材質です。ポリ合板をよく見かけますが、靴の底がすれる音や、砂と埃との相性ではベニヤのクリアー塗装(無色の保護塗装)が良いのではないかと思われます。

F-2 玄関ウォークインクローゼット

 

 玄関のタタキから入れるウォークインクロゼットに人気があるようです。このスペースが充分に取れると、玄関も片づけやすく重宝するようです。
 仮にこうしたスペースの余裕がなくても、玄関廻りにに置きたいもののリストを作って、収納方法を確認しておくことをお勧めします。収納物には次のようなものがあるでしょうか。
○スポーツ用品:ゴルフバッグ、各種ボール、スパイク、スキー用具、縄跳び、ボード
○車用品:ブラシ、タオル、ハンドクリーナー、洗剤、オイル、ワックス、スプレー
○子供遊具:乗り物(キックボード、一輪車、三輪車)、空気入れ、長靴、水鉄砲
○園芸用品:ジョウロ、ハサミ、手袋、肥料、ほうき、シャベル、鉢、ごみ袋、針金
○買い物用品:カート、認印

F-3 廊下収納

 

 ウォークインクローゼットは重宝しますが、中途半端な大きさだと収納力が落ちることがあります。それは、人が立ち入るスペースに物が置けないためと、入り隅は出し入れが面倒で有効に使い難いためです。それに加えて、小物の収納では表面積は欲しいものの奥行きの要らないことが多いですし、子供の玩具にいたっては、大きな箱にしまってしまうと遊ぶたびに全部がひっくり返されてしまいます。
 廊下の壁面に収納を設けると、ウォークインクローゼットでの立ち入り部分に廊下が該当するので面積の節約ができて、収納物に見合った奥行きを設定できます。
 「個人のものは個室に」、と決めつけなければ、廊下を積極的に活用して効率のよい収納を考えることが可能です。収納扉をガラスやアクリルにして、コレクションを展示する人もいます。

F-4 扉なし収納

 

 ウォークインクローゼットを作る場合、主寝室などに並べて小部屋を作って、通常の扉を設けるケースが一般的です。しかし、ベッドや他の家具の配置を考え合わせると、扉の開閉は意外と邪魔になることがあります。それに、小部屋として仕切ってしまえば主寝室から独立してしまい、広がりなどの演出も難しくなってしまいます。
 そこで、扉をなくして壁を衝立に変えてみてはどうでしょうか。衝立の上部にガラスをはめ込めば空気や埃の行き来もかなり遮ることができて、天井が続いて見えることから主寝室の広がり感も出てきますし、扉の開閉の煩わしさからも解放されます。
 また、出入りを2か所にしてウォークスルーにすれば、空気の通りの良い楽しい収納となるでしょう。

F-5 引き出し付きダイニングテーブル

 

 何人かの設計者の提案を雑誌で読んだものに、引き出し付きのダイニングテーブルがありました。ひとつの例は個人の箸入れとして、もうひとつは家計簿もしくは日記の保管場所でした。
 子供に自立心を持たせる方法のひとつとして、自分の箸を管理させるというアイデアが披露されていました。家事はできなくても、自分の箸を洗ってしまうという作業から、家族の一員としての自覚を促したいということのようです。
 また、ちょっとした記録はダイニングテーブルが適しているため、そこに筆記具と一緒にノートをしまえればとても有用だ、という提案でした。
 どちらも好みや考え方で評価は異なると思われますが、収納が日常を変える可能性に気づかされる、興味深い例ではないでしょうか。