G エコロジーに敏感な家

春秋分の真昼でも、南と北の屋根の日照受光量は倍の開きがあります。
春秋分の真昼でも、南と北の屋根の日照受光量は倍の開きがあります。

G-1 太陽光発電

 

 太陽光発電は、環境負荷低減に優れたシステムとして注目されています。開発当初はパネル製造時の温室効果ガス発生量が問題視されましたが、ここ10年で大幅に低減されたため、ますます貢献度が高まったとされています。
 しかし、イニシャルコストを節約・売電で償却するには20年程度かかると言われていますし、製造時負荷が低減されたとはいえ、先にガスを発生させる訳ですから、その寿命を全うできなければむしろ環境破壊となってしまいます。ですから、太陽光発電はそれなりの決意を持って取り組むべきものなのです。
 発電効率は、パネルの設置方法によって大きく変化するため、建築計画の初めに意識して盛り込んでいく必要があります。4人家族のモデルケースでは、4Kw強の発電容量が売電できる目安となり、それには南向きにに傾斜(20~40°)させたパネルが35㎡程度必要となります。これは延べで30坪強の住宅の屋根面積の約半分ですから、確保は可能なものの無造作に計画して得られる規模ではありません。
 また、発電エネルギーの有効利用やコスト回収のためには、オール電化住宅なども検討する必要があるので、太陽光発電は導入の適否を初めに決定すべきものと言えるでしょう。

G-2 雨水利用

 

 現在、全国的に雨水の宅地内処理が求められています。宅地内処理とは、屋根に降った雨をすぐさま下水に流してしまうのではなく、浸透桝という装置を通してなるべく地面に浸み込ませようとするものです。
 これが求められるのは、都市化が進むにつれて建物やアスファルトによる地面の被覆率が増大し、地面の雨水保水力が激減した結果、洪水の危険が増しているからです。
 浸透桝は穴あきの土管を縦に埋めたようなもので、その穴から地中に雨水が浸み込むことを期待して、一宅地に4本程度埋設します。この桝から溢れた雨は下水に放流されます。浸透させられる量に限りがあっても、一時的に浸透桝にため込むことで道路排水とのタイムラグが生じて効果があるのです。

 一方で、庭の水やりに相当量の水道水を使うケースがあります。現時点で水不足が深刻化してはいない日本ですが、水道水は大きなエネルギーを使って高度処理されたもので、節約が求められています。浸透桝の手前に溜め桝を設けておけば、治水のタイムラグに貢献し、雨を水やりに使用することができます。夏の夕方、涼を呼ぶ散水にも抵抗なく使えますし、雨水をポンプで送って真夏の屋根の冷却水にしているケースもあります。樋を伝って桝に帰ってくる循環使用です。
 トイレの洗浄水に使うことも考えられますが、まだ例が少なくて技術が洗練されていないため、熱心な人でないとストレスが大きいようです。

床を削る人々(ギュスターブカイユボット)1875
床を削る人々(ギュスターブカイユボット)1875

G-3 ムク材の再利用

 

 欧米のフローリングには、ムク材で厚さが20㎜を超えるものが少なくありません。これはぜいたくなところもあるかも知れませんが、実用的にも大切なことなのです。日本と違って室内でも靴を履いているため、ある程度の年月で表面が傷みます。このとき、サンダーなどで表面を削り取ってリフレッシュするための厚さなのです。
 扉も、枠・本体ともムク材で作っているケースが多いため、建物を解体するときは扉の中古業者が買い付けていくようです。
 日本は、製材やプリントの技術がとても発達しているためか廉価な貼りものが出回り、それが仕上げ材の相場観を形成しています。そのためムクは贅沢品と見られる傾向があります。しかし、ムクならその材齢が価値に結びつく可能性がありますが、少しでも傷んだ貼りものは引き取り手がないでしょう。
 割高になっては採用が難しいのももっともですが、長く使えて、取り壊しになっても移設できるような材料を少しずつでも増やしたいものです。

G-4 植物の効果

 

 ヒートアイランドという言葉を繰り返し聞くように、街の蓄熱がさらなる冷房負荷を呼んで大変な環境破壊を引き起こしています。このため夏の日中、太陽エネルギーをもろに受けてしまうビルの屋上を緑化しようと提唱されてきました。
 緑化が断熱材の役目をして日中涼しくなりますし、建物の蓄熱を防ぐので夜間の放熱が激減するからです。夜になって気温が下がったとき、同時に涼しくなる室内はとても自然で快適です。

 屋上緑化のために、超軽量の土なども開発されてきましたが、芝などを定着させるのは難しく費用もかかり、掛声の割には実施率は上がりませんでした。
 そんな中、水耕栽培で土のいらないさつまいも緑化が注目されています。夏に向けて葉を伸ばし、初夏には屋上を覆い尽くすそうです。NTT都市開発の発表では、屋上表面温度が55℃→28℃まで抑えられたとのことです。
 秋には収穫できる1年サイクルで、食用としては不足があるものの、葉と合わせて飼料にするならなかなか良い品質とありました。断熱効果・飼料としての二次利用に加えて、植物栽培時の二酸化炭素吸収効果にも大きなものがあります。
 今のところ、木造住宅に採用した例は見られませんが、こうした動きは加速されると思われるので気にかけておきたいものです。

 屋上緑化まで待たなくても、ネットを斜めに張った壁面緑化や、従来の藤棚など、植物と共生する環境対策はますます必要とされるはずです。庭先の葉の揺れで風邪を感じるように、工夫を始めればいろいろな楽しみにも繋がる期待があります。

G-5 パッシブソーラー

 

 G-1で触れた太陽光発電のような、機械力を使った自然エネルギー利用をアクティブソーラーと呼びます。これに対して、受動的ながら太陽エネルギーや風の恩恵が得られるように、建物に工夫を加える方法をパッシブソーラーと呼びます。
 現代では、スイッチ操作で室温をコントロールできますが、そうした機械がなかったときには、自然からエネルギーを呼び込んで少しでも快適にしようと、知恵を絞ったのです。打ち水をしたことがある人は、その効果の思わぬ大きさに気づかれたことと思いますが、小さな工夫でも環境を変化させることができるのです。
 京都の町家では、日向に上昇気流が起きることを利用して、日陰の小さな池から涼しい風を引き込もうとします。また、部屋に窓をふたつ開けるとき、その大きさと位置関係、高さ関係で風の流量を変化させることができます。このように、風は待つばかりでなくて自ら引き起こすこともできるのです。

 夏の日射しをカットして、冬の日射しを迎え入れる庇は、最もポピュラーなパッシブソーラーかも知れません。もう一歩進めて、冬の日射しだけがあたる床にレンガなど冷め難いものを敷きつめることで、昼の日射しを熱で蓄えて、夜その熱の放射を受けることも仕掛けられます。
 自然エネルギーを活用することは、電気代の節約と、環境保全への貢献ということと同時に、自然の息吹を感じて対話する、生活の楽しみのひとつにもなり得るでしょう。